1972年から現代まで、日本の主役となったイオン交換膜法の塩。

いったいなぜ良くないと言われているのだろうか?

 

それを正しく理解するには、

 

すべての塩の原点である海水の性質を知らなければならない。

 

今回は海水から生まれる塩の性質、そしてイオン交換膜法の問題点についてくわしく探っていく!


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塩のちがいは工程で決まる

すべての塩の原点は海水である。

地球上、どこの海水をとってもその成分はほぼ変わらず同じだ。

しかし、実際にできあがった塩は、その成分や味はひとつひとつちがう。

 

なぜだろう?

 

まず原料がちがう。

国産の塩の主な原料は海水だが、世界的にみると岩塩、湖塩などが多い。

 

さらに工程もちがう。

たとえ原料が同じ海塩でも、工程がちがえば成分も味も変わってしまうのだ。

 

このように原料のちがい、工程のちがいから、塩の成分や味もさまざまな種類にわかれる。

海水はミネラルの宝庫

海水に溶け込んでいる塩分は約3%。

一般的に塩分というと、塩化ナトリウムをイメージするが、海水にはそれだけでなく多くの無機質(ミネラル)をふくんでいる。

海水に含まれてい約3%の塩分は、塩化ナトリウムがほぼ占めているものの、残りは他のミネラルで構成されている。

 

 

その他の0.3%の中にも数十種類ふくまれており、海水全体では100種類はあるとされている。

 

これらのミネラルの性質として重要なのは人間の体内では作りだせないということだ。

 

つまり食事などで摂取しなければならない。

前の記事「2.人間のふるさとは海」でも書いたが、
人間の60%を占める体内水分は海水の成分にとてもよく似ている。

だからこそ健康な身体を保つためには60%の体内水分の環境をととのえる必要があるのだ。

 

それには体内で作ることができないミネラルをしっかりと摂らなければならない。

 

塩化ナトリウム以外を排除したイオン交換膜法

イオン交換膜法は、電気により塩化ナトリウムのみをとり出す。

つまり他のミネラル分が入っていない、塩化ナトリウム純度の高い精製塩ができあがるのだ。

 

イオン交換膜法に国内の塩作りが変わることが決まった当時、このような塩の作り方について疑問をもった人達が本来の塩を守るため、運動を起こすことになる。

1971年、参議院において運動側の質問に対する応答内容

【質問】
イオン交換塩は非常に純度が高く、食用として問題はないのか?

【答え】
イオン交換塩が有害であるという臨床例はない。
塩中にふくまれるミネラルはわずかであるから純度が高くなっても1日の摂取量からみて問題ない

このように当時、国はミネラルを取り除いた高純度の塩でも、それはわずかであるから大丈夫だと答えている。

そしてその国の考えは現在も変わらないままだ。

 

イオン交換膜法の精製塩のおかげで確かに日本は大きく経済成長することができた。

精製塩がもたらしてくれたものは、日本にとって素晴らしいことだった。

今も、精製塩が日本の工業を支えていることには感謝しなければならない。

 

しかし・・・

 

問題は工業用だけでなく、食用にまで使っているということである。

 

国は大丈夫だと言うが、精製塩を食用にすることは見逃すことができない。

イオン交換膜法は塩化ナトリウムのみに注目し、ナトリウムイオンと塩素イオンが通過しやすいように交換膜が作られているため、
カルシウムやマグネシウム、硫酸イオンなどは膜にさえぎられてあまり濃縮されません。
一方、ナトリウムに似たカリウムイオンなどは異常に濃縮されてしまいます。
また生命に必須の微量元素も排除されてしまうのです。
従って、イオン交換膜法がいかに効率的な方式であっても食用塩の生産には採用すべきではないのです。

 

このようにイオン交換膜法の塩は、塩化ナトリウムのみであり、海の成分とはちがったものになってしまう。

前の記事で書いたように、鑑賞魚の海水魚も、水槽の水に精製塩を入れると弱ってしまうのと同じように人間もミネラルが欠けた精製塩を摂ると体が弱ってしまうのだ。
(参照:「2.人間のふるさとは海」)

 

今回、私は記事を作成するため、たくさんの本を読んで調べた。

その中の一冊、子供向けの塩を学ぶ漫画では、塩化ナトリウム以外のミネラルは微量であるから、他の食物から摂れば大丈夫と説明してあった。

大手の書籍会社を通して、子供に精製塩は大丈夫だと自信をもって教えているが・・・

果たして本当に大丈夫なのだろうか?

それは、またあとで探ることにして、まずはもっと深く塩の性質についてみていこう。

塩が結晶化する順番はちがう

塩を生産するには濃い塩水から水分を蒸発させていく。

塩というのはプラスの電気をもったナトリウムイオン、マイナスの電気をもった塩素イオンが結びついてできている。

塩水では、水分がこれらナトリウムイオンと塩素イオンの結びつきを切り離しバラバラにしている状態だ。

なので、塩水から水分を蒸発させてしまえば、離れていたふたつのイオンは再びくっついて結晶になる。

 

私はこれを目で見て確かめるために、家にある塩をコップの水に溶かし塩水を作って実験することにした。

水で離れ離れにされたナトリウムイオンと塩素イオンは、水分が蒸発すると本当に再びくっつくのだろうか?

 

コップに塩を入れて溶かすと綺麗に消えて透明になった。見た目は水と変わらない。

これをベランダにおく。

(塩を溶かした水をベランダに置く)

 

 

太陽の熱と風の力で蒸発させていく。
そして5日後・・・

(水分がなくなり四角い塩の結晶が顔を出した)

 

このように水分がなくなれば水によって離れ離れになったナトリウムイオンと塩素イオンは再びくっついて塩の結晶として姿をあらわすのだ。

実際に目で見て納得した!

しかし、先述したように自然の海水は塩化ナトリウムだけで構成されているわけではない。

他にもカルシウムやマグネシウムなどのミネラルがたくさん入っている。

これらのミネラルが入っているということは、結晶化する過程も変わってくるはずだ。



ミネラルそれぞれの性質はちがう

海水の塩分に含まれている多くのミネラルたち。

ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど・・じつはそれぞれ溶ける順番がちがう。

溶けやすい順番

マグネシウム→カリウム→ナトリウム→カルシウム

これはコップの水に塩を溶かしてみた時に実感した。

まずマグネシウムやカリウムなどが先に溶けていき透明になる。

つづいてナトリウムが溶け、最後に溶けにくいカルシウムが白くにごったまま残り、やがて透明になっていった。

ひきあげるタイミングで味が変わる

塩作りでは、このミネラルの溶ける順番が成分と味を大きく左右する。

どういうことかといえば、溶ける順番がちがうということは、濃い塩水を蒸発させた時、固まってくる順番もちがうからだ。

ミネラルが溶けやすい順番を逆にすると固まりやすい順番ということになる。

固まりやすい順番

カルシウム→ナトリウム→カリウム→マグネシウム

海水の水分を蒸発していき、じょじょに濃くなり13%くらいになるとカルシウムが白くあらわれはじめる。

25%くらいからナトリウムがあらわれる。

27~28%になるとナトリウムと並行してカリウム、次にマグネシウムという順番になる。

濃度30%でも残るカリウムやマグネシウムはいわゆるニガリといわれる成分なので、あまり多く入りすぎると苦くなりすぎる。

そのため適度な濃度でひきあげられることで味が決まるのだ。

 

 

つまり、たとえ同じ海水から作った濃い塩水が原料でも、蒸発させて引き上げるタイミングが変われば、成分も味わいも変わる。

 

なぜならミネラルは、このようにそれぞれがもっている味がちがうからだ。

 

 

このように塩はただ単にしょっぱいだけの味覚ではない。

多くのミネラルが合わさることで奥の深い味わいをもつ。

 

イオン交換膜法で作られた精製塩はほとんどが塩化ナトリウムであるため、しょっぱさだけとなる。

 

実際、精製塩から、ミネラルが入った自然塩に変えると、最初はしょっぱさが精製塩のようにきつくないために戸惑うことがある。

 

だけど、これが本来の塩の味なのだ。

 

本来の塩の深い味を知ると、イオン交換膜法の精製塩に慣れていた味覚も戻ってくる。

そして、もう単にしょっぱいだけの精製塩にはもどれなくなる。

 

自然塩で作った梅干
自然塩で作った味噌
自然塩で作ったしょうゆ

 

これらが私たち日本人が昔から味わってきた本来の味である。

海から山へと連携プレーをして作り出してきた昔ながらの日本の塩の味である。

精製塩では決して作り出すことはできない味なのだ。

 

自然塩をなめて美味しく感じるのは、

 

味覚だけではなく、体の海が本来の塩を求めているからではないだろうか?

・・と私は思う。

自由に塩が選べるようになるまで

国が一方的に決めた塩専売法が、1992年に廃止になり、スーパーにはさまざまな自然塩がおかれるようになった。

今では、私たちは料理によって岩塩や、海塩など、自由に塩を買い求めることができる。

また、健康のためにと、ミネラルが排除されている精製塩を避けて、ミネラルたっぷりの自然塩も自由に買い求めることができるようになった。

しかし、このような状態が普通に起こったと思ってはいけない。

 

こうなるまでには、イオン交換膜法を推し進める国と、本来の塩を求める人たちの運動があったことを知っておかなければならない。

 

次回、「7.塩運動(本来の塩を求める戦い)」つづく・・・